今回は、部屋を明るくするだけじゃなく、晴れやかな雰囲気にする照明。建築に溶け込み、空間に広がりと奥行き感を与えるLED照明「SLIT(スリット)」や、窓から本当の空が見えているかのような青空照明「misola(みそら)」の開発に携わる松田さんのしあわせシェア物語をご紹介します。
01 日本の照明にはもっと、「カッコよさ」が必要だ。
入社してはじめて設計に携わったのが「SLIT(スリット)」という照明です。その名前の通り、すき間から光が差し込んでいるようにみえるくらい細長い間接照明で、建築に溶け込み空間に広がりと奥行きをあたえます。目立つ存在ではありませんが、開発ではスリムさに徹底的にこだわりました。板金、樹脂、取付機構など様々な制約と戦いながら「1mmでも細いスリムな照明」を追求したんです。実際に店舗に導入していただき、お客様から「お店の雰囲気がとてもよくなった」と喜んでもらえたときは、開発が難航したぶん、大変感動しました。付加価値のある「カッコいい照明をつくる」ことが、いまでは私のプライドです。
02 青空を照明にするという大胆発想「misola(みそら)」
SLITの開発で自信が持てるようになった頃、青空照明「misola」という前代未聞の構想が舞い込んできました。とある開発者の方の「閉塞的な職場環境に、青空を持ってこれたらいいなあ」という声から開発が始まった製品でした。青空の見える窓のような照明をつくる、というのです。はじめて試作品を見せていただいたとき、これが照明なのか?と衝撃を受けました。以前より機能だけではなく物語性があるような照明が必要だと考えていましたので、このアイデアに感銘を受け、ぜひ製品化しましょうと熱い握手を交わしました。
03 「日焼けの心配はないですか?」に思わずニヤリ。
照明で、どうやって青空を表現するのか。例えば液晶で青色を映しだすだけでは、それはただの青い平面。まったく青空には見えません。リアルな空を演出するためには、奥行のある空の青さと日の差し込みを表現する必要がありました。まさに空の物理現象を照明という箱に閉じ込める大挑戦です。
少し難しい話になりますが、空がどこまでも高く遠く感じるのは、目の焦点があわないから。青い光が大気中で散乱して目に入ってくるからです。この現象を再現するべく、何度も何度も試作を繰り返しました。さらには、フレーム部に影を表現することで、太陽の向きを感じられるようにしました。また、misolaは空の色も変化出来るので、1日の時の移ろいも表現可能です。
ある商業施設に導入を検討していただいたのですが、「日焼けしないかしら?」と心配の声をいただきました。照明なので、全くその心配はないのですが(笑)、それほどまでにリアルな青空の再現ができたのだと思うと嬉しかったです。
04 おばあちゃんに、「外」を感じさせたい。
しあわせをシェアしよう。というコンセプトワードを三菱電機では掲げています。私個人が身近でしあわせにしたい人は誰?と聞かれたときに、思い浮かべたのは祖母との話です。
祖母は怪我をして以来、寝たきりの状態になってしまって。閉塞的な部屋にいることで、気持ちも落ち込んでしまったんです。そこで、リフォームをしてもっと光が入って、外を感じられるようにベランダを広く改築しました。すると、憂鬱な気持ちも和らいだんですね。
誰かをしあわせにするって、すごくうれしいことです。そして青空は、多くのひとをしあわせにできる。misolaを介護施設などに導入できれば、同じように笑顔が増えるはず。そう確信しました。
05 みんなを青空の下へ。しあわせをシェアする。
misolaは、オフィスから病院まで、幅広いお客様に使っていただいています。また幼稚園では、夏の猛暑で子どもたちを外で遊ばせるのが難しくなってきているそうで、遊戯室にmisolaを設置したことで、室内でも屋外を感じられるような雰囲気の中で遊んでもらうことができるようになったと喜んでもらえました。
女性のお客様より脚を怪我され大好きだった散歩に行けなくなってしまったご家族のために、misolaをプレゼントされたというお話も耳にしました。家族を想う気持ちに、技術で寄り添う。技術者としての自分の仕事に誇りを持ちました。
06 小さな部屋の中から、社会全体をしあわせに。
お客様からは「雲もだして欲しい」と言われたこともあります(笑)。リアルな雲にこだわりたいので技術的に難しそうですが、将来実現できたら面白いですね。misolaは、しあわせをシェアしようというコンセプトに近い製品です。「青空のあるしあわせ」を、家族や職場、さらには社会へシェアしていけたら、猛暑で外で遊べない子どもたち、閉塞的な空間で過ごす人たち、事情があって外に出られない人に、晴れやかな雰囲気を届けることができる。
みんなが笑顔になれば、社会も変えられる。三菱電機には、小さなお部屋の中からでも社会全体をしあわせにできる技術があると信じています。
松田 康平
三菱電機照明株式会社
開発本部 器具技術部 器具技術第一課
2015年三菱電機照明入社。開発本部 器具技術部にて、照明器具の構造設計に携わる。
入社以来、製品の加工方法や設計手法を学び、建築化照明やエレベーター照明など様々な照明器具の機構・構造設計を手掛けてきた。
近年では、青空照明 misolaを担当し、製品の筐体・機構設計開発に携わる。
現在は、misolaの機種展開のため新機種の構造設計に奮闘中。